現代の採用現場では、SNS上で情報発信をしたり、DMによる求職者とコンタクトしたりする方法が流行しています。
SNS上で行う採用活動は「ソーシャルリクルーティング」と呼ばれ、年々導入する企業が増えています。
当記事では、人気SNSのインスタグラムを採用業務に活用すべき理由やメリット・デメリットなどのポイントについて解説します。
インスタを採用現場に導入するか検討されている人事担当者の方にピッタリな内容です。
当記事を読んで、新しい採用手法にチャレンジしてみましょう。
インスタ採用の基礎
この章では、インスタを使った採用活動について、基本的なところから解説しています。
下記3つのポイントを通して、「そもそもインスタ採用って何をするの?」「他のSNSではダメなの?」といった疑問にお答えします。
・日頃の採用業務との関係は?
・なぜインスタなのか。他のSNSとの違いは?
手始めに、SNSを採用現場に導入する意味を押さえましょう。
インスタ採用の具体的な行動は?
投稿内容の例としては、会社説明会・業界セミナーの案内や、職場風景の写真・解説などが挙げられます。
他にも、従業員のショートインタビューなど、求職者に生の声を届けるツールとして活用する企業もあります。
インスタを使って企業にエントリーする人材を一人でも増やすことを目的にしているケースが多いです。
日頃の採用業務との関係は?
インスタはあくまでも求職者とのつながりを増やすための手段に過ぎません。
母集団形成の効率は上がる可能性が高いですが、平時の仕事が大幅に削減されるものではないのでご注意ください。
むしろ採用担当者の仕事が増えてしまうので、リソースを超えないように注意しましょう。
なぜインスタなのか。他のSNSとの違いは?
ソーシャルリクルーティングにあたり、Instagramをおすすめする理由は、以下の3つのポイントを押さえているからです。
ポイント1.アクティブユーザー数が多い
Meta(旧Facebook)社によれば、日本国内のInstagramにおけるユーザー数は3,300万人を超えています(※1)。
国民の3人に1人が利用している計算になります。
ユーザー数の多さは認知度の強化や拡散力の高さにつながる重要なポイントです。
これだけの人数が使っているSNSであれば、安心して参入できます。
※1 Meta社公式ホームページ「Instagramの国内月間アクティブアカウント数が3300万を突破」
ポイント2.華やかさを演出しやすい
一時「インスタ映え」という言葉が流行った通り、インスタは写真とともに華やかな私生活を投稿する用途に向いたSNSです。
写真の加工なども簡単で、足りていないものがあれば後からでも投稿の修正(無料)ができるので非常に使いやすいです。
企業としても、いきいきとした従業員の様子など、良いイメージを持ってもらいやすい側面を生かしたイメージアップを図れます。
ポイント3.投稿機能が豊富
ここまでのポイントは、Twitterなど他のSNSでも概ね同じことがいえます。
むしろアクティブユーザー数はTwitter(約4,100万人)に負けています。
しかし、Twitterは一度に140字(有料会員は2,000字)までしか投稿できず、動画・写真は4枚が限度です。
インスタは投稿文字数が最大2,200文字とかなりの長文を記載できます。
また、動画・写真を一度に10枚まで投稿でき、他にもリールやストーリーズなど豊富な動画投稿機能を搭載しています。
視覚的にユーザーに訴える機能は、インスタの方が優れているといえるでしょう。
インスタを使った採用活動で成果を出す4つのポイント
ここまでで、インスタを使ってどのような採用業務を行うか、なぜインスタなのかをご理解いただけたかと思います。
ソーシャルリクルーティングは試行錯誤の連続です。
インスタを活用して採用活動で成果を上げるには、ただ写真を載せればよいのではなく、正しい方法や行動を知っておく必要があります。
この章では、インスタ採用の実施にあたり、採用担当者が重視すべき4つのポイントを挙げていきます。
2. 求める人材像に向けた発信を意識する
3. 社内外から協力者を集める
4. 定期的に投稿結果を分析・改善する
ビジネスも人材採用も、共にマーケティングの視点が必要であり、ソーシャルリクルーティングにおいても例外ではありません。
これらを押さえておけば、インスタのアカウントは企業にとって強力な武器になるでしょう。
1. ビジネスアカウント(無料)に切り替える
インスタ採用にはビジネスアカウント機能を活用しましょう。
ビジネスアカウントでは、プロフィールにCTAボタン(「お問い合わせはこちら」「予約する」など)の表示が可能です。
問い合わせがしやすくなる分、エントリーの心理的なハードルが少し下げられるので、コンバージョン(採用応募人数)アップにも貢献します。
ビジネスアカウントのわかりやすい実例として、スターバックスジャパンの公式アカウントをご紹介します。
水色の線を引いたり囲ったりしている部分が、ビジネスアカウント特有の機能です。
CTAボタンが表示されているので、直接電話やショップへリーチできるのがわかります。
このように、ビジネスアカウントに切り替えるだけで個人用では利用できない機能をオンにできるのです。
また、ビジネスアカウントはインサイト分析が可能です。
投稿のリーチ数(閲覧人数)やインプレッション数(のべ閲覧人数)、Webサイトクリック数など、アカウントを通してユーザーの行動を可視化できます。
ビジネスアカウントは無料で、効率的な集客や投稿の改善に役立てられるので、ぜひ活用してください。
なお、会社名ではなく、採用担当者の名前でアカウントを運用するとしても、効率の観点からビジネスアカウントへ切り替えをおすすめします。
2. 求める人材像に向けた発信を意識する
次に、誰に向けてどのような発信をするのかを考えましょう。
投稿内容を考えるには、まずペルソナを立ててください。
ペルソナとはマーケティング用語のひとつで、企業がターゲットとしている人物像より細かく設定されたものを指します。
以下の表でターゲットとペルソナの違いを説明します。
ターゲット | ペルソナ |
---|---|
想定人物像が広範囲な分、母数は大きいが適切なマッチングが難しい。 | 採用を想定した人物の特徴を細かく捉えている。 母数は少なくなるが適切な人材とのマッチングを図れる。 |
20代、男性、大学生、関東在住 | 22歳、男性、○○大学4年生、一人暮らし、テニスサークル所属、居酒屋アルバイト勤務、など |
本来はマーケティング活動に使われる考え方ですが、採用現場にも同じ考えを取り入れている企業は多いのではないでしょうか。
闇雲に投稿しても意味がないので、求める人物像を絞り、当てはまる人が好みそうな内容の投稿を考える必要があります。
上の例であれば、一人暮らしを前提とするなら住宅補助の福利厚生があると嬉しいですよね。
また、社内にテニス部の紹介や、職種の説明会があると興味を惹きやすいです。
自社に来てほしい人材は、どんな情報があれば応募を検討してくれるか、求職者の立場になって考える癖をつけましょう。
3. 社内外から協力者を集める
平時の採用活動を担当者1人で進めていくのが困難であるように、インスタ採用にも協力者の存在が不可欠です。
仕事現場の写真撮影や従業員のインタビューなど、各部門の従業員と細かい調整が必須となります。
社内中にアンテナを張っておけば、多様な発信ができるようになりますので、これまで以上に社内の人間関係を大切にしてください。
また、求職者の認知度を一気に上げたい場合は、インフルエンサーとコラボするのも手です。
インフルエンサーとは、フォロワーが多く、発言に大きな影響力のある人物を指します。
モデルやタレントなど、若者に人気のアカウントと企業のコラボは、今や日常茶飯事です。
インフルエンサーを通して彼らのファンにリーチできるので、飛躍的な認知度の向上につながります。
先ほどご紹介したペルソナを立てて発信する行為と若干矛盾しますが、エントリーの母集団を大きくする点においては非常に有効な方法です。
中小企業などで認知度に課題があるならば、試してみてはいかがでしょうか。
4. 定期的に投稿結果を分析・改善する
一般的に、企業がSNSアカウントを運用するにあたり、様々なKPIを立ててPDCAを回しています。
アカウントが自社の売上に貢献しているか、認知度が上がっているかなどを定期的に計測し、改善していくのが大切です。
採用活動にインスタなどを導入する場合も同様で、人材確保に貢献しているかを客観的に見ていく必要があります。
インスタ採用の効果測定において、重視すべき指標は以下の3点です。
・いいね、コメント数
・誘導・コンバージョン数
フォロワー数は認知度・ブランディング状態の把握につながります。
いいね・コメント数は、自社に興味のある人材の反応が見えるので、投稿がどのように見られているのかがわかります。
インスタ採用における誘導・コンバージョンは、求人広告へのジャンプ・エントリーが該当します。
これらは全て数字として計測できるので、伸びの良し悪しとその原因は、定期的に振り返り、改善点を見つけていきましょう。
時間をかけてたくさん投稿しても、なかなか成果が現れないことがありますが、諦めずに取り組んでください。
インスタ採用のメリット
ここまでに、インスタ採用における考え方として重要なものを取り上げてきました。
この章では、インスタを採用現場に導入するメリットへの理解を深めていきます。
インスタはその手軽さやユーザー層の多さから、採用現場に導入すると下記のメリットを得られます。
②写真や動画で視覚的に魅力をアピールできる
③お金をかけずに情報発信ができる
メリットを正しく理解し、インスタを通した採用効率アップを目指していきましょう。
①ユーザー層と求職者層の属性が近い
総務省の調査(※2)によれば、20代の78.6%、30代の57.1%がインスタを利用しています。
企業アカウントで情報収集している人が100人中50人以上いるとすれば、情報発信の価値は大いに高まりますので、多くのターゲット層に自社を知ってもらうチャンスです。
20代前半中心の新卒採用や、30代が多い中途採用の現場において、インスタの導入は採用活動を有利に進めていく鍵となるでしょう。
※2 総務省「令和3年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」
https://www.soumu.go.jp/main_content/000831290.pdf
②写真や動画で視覚的に魅力をアピールできる
インスタは写真や動画の投稿をメインとしたSNSなので、投稿内容を視覚的に理解しやすい特徴があります。
また、現代の人間(特に若い人)は文字を読むよりも、絵や写真など一瞬見ただけで情報を読み取れるものを好むので、SNSを使った採用との相性が良いです。
一面的な情報にならないためにも、多くの部門や商品、採用イベントの風景など、満遍なく情報を流すようにしましょう。
③お金をかけずに情報発信ができる
インスタは無料でアカウントを作成できるので、アカウントを運用するだけならコストをかけずに実施できます。
しかもインターネットを通して日本中に情報を届けられます。
求職者側も情報収集のためにインスタのアカウントを作っている可能性が高いです。
新卒の学生がターゲットであれば、仲間同士で投稿のシェアも期待できます。
お互いに始めるハードルが低い分、多くの人に自社のアカウントを見てもらいやすいので、集客もしやすいといえるでしょう。
インスタ採用のデメリット
メリットの多いインスタ採用ですが、いいことばかりではありません。
下記のデメリットもあわせて押さえておく必要があります。
②炎上すると取り返しがつかない
③常に新しい投稿ネタを考えなくてはならない
これらのデメリットは全て対策可能なので、注意して臨めばそこまで怖いものではありません。
ただし、決して無視できない内容ですので、ポイントを押さえて活動を進めてください。
①採用担当者の負担が大きい
インスタで採用活動を行うにあたり、担当者の負荷が重くなりがちです。
運用自体の工数が多いため、平時の業務に支障が出るおそれがあります。
投稿する画像選びや編集などにも、多くの時間を割かれることも理解しておく必要があるでしょう。
長めの文書を執筆する場合も同様です。
1回の投稿で最大2,200文字まで書き込めるので、多くのポイントを求職者に伝えられますが、相応の時間も取られるので注意しましょう。
②炎上すると取り返しがつかない
SNSにおける炎上とは、不用意・不適切な投稿によってアカウント自体が多くの非難に晒される事態を指します。
炎上の火種になりやすいのは、不謹慎・差別的な内容、従業員によるSNS内外での言動などです。
一度炎上すると、SNS内で拡散され、雪だるま式に騒ぎが大きくなり、取り返しのつかない事態になりかねません。
企業アカウントが炎上すると、イメージダウンや売上の減少など、大きな損害を被ります。
当然、求職者のエントリー数も激減します。
投稿前は必ず上司とダブルチェックを行いましょう。
③常に新しい投稿ネタを考えなくてはならない
アカウントを作りたての頃は投稿する内容のストックに余裕があるものですが、長く運用していると段々投稿ネタが尽きてきます。
企業として発信できる内容には限りがあるので、いずれ新しい投稿ネタを考えるのに苦労します。
多くの部門に顔をつないで社内の情報を仕入れる、業界のニュースに目を通すなど、広くアンテナを張っておきましょう。
まとめ
インスタ採用は、豊富な機能を生かした効率の良い採用活動を無料で実現できるツールとして、多くの企業が導入しています。
数あるSNSの中でも、インスタはかなりソーシャルリクルーティングに向いているといえます。
導入に迷っている方や、投稿内容が思い浮かばない方は、競合他社のアカウントを見て学ぶのもよいでしょう。
ただし、インスタに投稿し続けるにはそれなりの時間と労力を要します。
工数をかけずにインスタの採用アカウントを運用したいのであれば、作業の一部または全部を専門業者に外注しましょう。